クリア・スカイ
「陽咲ちゃん、今日も来てくれたの? ありがとう」
女将は愛想よく私に話しかける。でも私は、それに笑顔で返すことが出来ない。
……私なんかに、笑いかけるくらいなら、もっとほたるに笑いかけてほしかった。ほたるはずっと、それだけが望みだったのに。
涙が出そうになるけど、ぎゅっと歯を食いしばって我慢する。そして、女将の顔を真っ直ぐに見据えてこう言った。
「女将、話があるんですけど、屋上まで来てもらえませんか」
「……いいわよ。何かしら。なんだか怖いわ」
女将は私が普段と違う様子に気づいたのか、表情が硬い。椅子から立ち上がり、ほたるに一言「言ってくるね」と告げていたけど、そのちょっとした行動さえにも腹が立つ。