クリア・スカイ
どうして、今なの。どうして、今になってそんなことが出来るの。
……遅すぎるよ。
「じゃあ、さっそく行きましょう」
私は女将よりも数歩先を歩いて、屋上までの階段を上る。一歩一歩進む足元に、力が入る。いつもよりも強く踏み込んでいるせいで、足音が大きい。
足の裏が痛い。じんじんする。でも、ほたるの心の傷に比べたら、こんなものはへでもない。
屋上に続く扉をゆっくりと開けると、そこには雲一つない青空が広がっていた。
白いシーツがたくさん干されていて、いつもよりも強い風が柔軟剤のいい香りを運んでくる。
「ここには、前にも一緒に来たわね。その時は……陽咲ちゃんに、暗い話を伝えてしまったわね」
「そうですね。でも私は、その話を聞いても、ほたるは目覚めるって信じています」