クリア・スカイ
「――少しだけ、昔話をしてもいいかしら」
「……はい」
女将は小さく「ありがとう」とつぶやいて、彼女の過去について話し始めた。
「今から二十年くらい前になるわ。私は東京の大学に通っていたの。都会に憧れていてね。初めての一人暮らし、初めての東京、親元を離れた自由……。まるで背中に羽根が生えたかのような気分だったわ。
そして、私はそこで、一人の男性と出会ったの。とても素敵で、ひとめぼれだった。彼も私に好意を持ってくれて、すぐに付き合ったわ。とても楽しかった。それでね、大学在学中に、彼の子供を妊娠したの」
女将は大学在学中に妊娠し、学生結婚をすることになった。両家は、最初は反対していたけど、新しい命が芽生えたことに喜んでいたという。