クリア・スカイ

 柳さんは少しずつ、女将に近づいていった。そして、彼はつけていたメガネを外した。


「僕のことが、分かりますか……?」


 この瞬間、私の頭の中で、すべてのピースがつながったような気がした。断片的な情報がつながって、ある一つの真実が浮かび上がる。

 そして、私はこの時になってようやく、柳さんが誰に似ているのかが分かった。


 あまりに近くて、身近すぎて、気づかなかった。最近は目を合わせて話すこともなかったから、分からなかった。


 少したれ目な瞳、くしゃっとしたくせ毛。


 春陽のような、見ているだけで心が温かくなるような笑顔。優しい雰囲気、周りを和ませる空気。




< 263 / 318 >

この作品をシェア

pagetop