クリア・スカイ
「……やっぱり駆だったか」
「よっ。お前は旅館に行っていたのか?」
「うん、まぁ」
家に上がりキッチンに行くと、ダイニングテーブルに座っている幼馴染の姿を発見した。弟の陽太(ようた)と一緒に夕食のおかずを頬張っている。
「陽咲、ちゃんと手洗ってうがいしなさいね」
「はあーい。それで、どうして駆が家にいるの?」
「学校帰りに偶然陽太と会ってさ。陽太が遊びに来てって言ってくれて」
「うん。またお兄ちゃんにサッカーを教えてもらいたくってさ」
陽太の何気ない一言に一瞬だけ場が凍りついた。なぜなら、今の駆にサッカーは禁句だからだ。
「でも結局、サッカーはしなかったんだぁ」
あからさまにがっかりする陽太。中学に上がったとはいえまだまだ子供。素直に感情を伝えることが出来る、可愛い弟。そんな彼に悲しい表情をさせる駆が少しだけ憎いと思った。