クリア・スカイ

――旅館に到着すると、いつものように裏口から入って更衣室に行く。

 ほたるも同じようにしていたと思うと嬉しい。まねしたのは私の方だけどね。
 更衣室にあるロッカーを開けて鏡を見ると、前髪はピンで留めているため、変なクセはついていなかった。

 それにしても、今日の更衣室はとても静かだ。皆休憩する暇もないほど忙しいのかな。いつも決まって誰かがいたから、ひとりで着替えるのは少し寂しい。


「あっ、一人じゃなかったね。今は君がいるもんね」

 私は首元に光る空色の石に向かって、優しく語りかけた。


「いつかほたるが目覚めるまで、私の傍にいてね。そういう約束なんだ」

 小さな石を人差し指で優しく撫でる。ひんやりと冷たい君は、びっくりするほど温かい心を持っていた。


< 283 / 318 >

この作品をシェア

pagetop