クリア・スカイ
「柳さん、これ、お返しするッス」
「……いいのですか? 君も大好きだったのでしょう?」
「はい。でも内容はもう暗記しているし、これは柳さんのモノなので。この絵本も持ち主の元に帰ることが出来て喜んでいると思います」
駆が柳さんに差し出したのは、あの絵本だった。神主さんが妹である女将と、その息子である柳さんのために作った、世界に一冊の本。
この本の記憶を私は見たことがないけど、たぶん愛に溢れたものなのだろう。
「それでは、お言葉に甘えて頂きますね。……奇遇にも、僕も宮村くんにこの本を借りたいと思っていたんですよ」
「おお、奇遇ッスね! 何に使おうとしていたんですか?」