クリア・スカイ
四.新しい風。
今日も学校は退屈だった。でも昨日と違って誰も話しかけて来なかったのは良かった。無駄に心を乱されることもなく、平常心のまま学校を出ることが出来た。
いつものように自転車に乗って住宅地を抜け、サイクリングロードを走る。
川と平行線に伸びていく広い道。ランナーや自転車がその道を走り、犬を連れている人は道の端を歩く。
だいたいの犬は川辺に茂る草むらを走るのが好きだ。私はそんな彼らを見るのが楽しみで、いつも視線は左手の草むらの方にある。今日も例外なくその方角を見ていると、少し先に犬ではなく若い男性の姿を見つけた。
自転車から降りて、ゆっくりと押しながら彼の方へと歩いていく。彼の姿が大きくなるにつれ、その男性が昨日旅館に泊まっていた柳様だと確信する。