クリア・スカイ
今日も白いシャツを着ていて、草の上に胡坐をかいて座っている。手には本を持っているのに、視線はずっと川の方を向いている。
旅館にいる時と全く変わりないその姿が、なぜか少しだけおかしかった。
それだけじゃない、昨日のようにまた身体に緊張が走り、あっという間に鼓動が速くなる。どうしてだろう。私はこの人に興味がある。新しい出会いは求めない、友達は作らないって決めているのに、心はこの人を知りたくて仕方がないって言っている。
「あ、あの……こんにちは」
好奇心には勝てず、私は柳様の背中に声をかけてしまった。好奇心だけではない。旅館の一員として、お客様には挨拶をしなければ。
そう、これは義務だ。無視して通り過ぎるなんて失礼すぎる。