クリア・スカイ

「ご、ごめんなさい。僕たち、どこかでお会いしましたか?」

「えっと、私、海堂旅館でアルバイトしていまして、昨日夕食を運びに……」

「ああ! 夕食の時の。あの時はメガネを外していたので、よく見えていませんでした。でも髪の短い仲居さんが来ていたのはちゃんと覚えていますよ」


 うまくフォローをしてくれただけだと思うけど、それでも嬉しかった。メガネをしてなくても髪の短い子のことは覚えていた。そう聞いただけで元気が出るなんて不思議だ。


「それで、先ほどの質問に答える前に、改めて自己紹介させてください。僕は柳慶(やなぎけい)。今年大学三年生で、東京から来ました。……君は?」

「わ、私は、空野陽咲っていいます。高校一年生で、柳様よりだいぶ年下なので、敬語は止めてください」

< 36 / 318 >

この作品をシェア

pagetop