クリア・スカイ
「やった。じゃあ、明後日の土曜日にしましょう。早い方がいいですから。当日、僕は旅館でお待ちしていますね」
とんとん拍子に話が決まっていく。自分でもどうしてだか分からないけど、柳さんが私にお願いしてくれたことが嬉しい。初めての男の人との約束。まだ二回しか会ったことが無くて、一度しか話したことのない人からのお願い。
きっと、柳さんじゃなかったら断っていたと思う。
どうして柳さんだったら良いのかなんて分からない。少し不安だ。でも、わくわくが止まらない。まるで体が地についていないみたいにふわふわして、心がどこにあるのかも分からない気分だ。
私なんかが楽しい事に身を置いてはいけない。そんなことは分かっているけど。
いつか東京に帰る人との一度きりの約束をするくらい、きっと許してくれるだろう。このくらいで私の時間は進まない。何も変わったりはしない。
――そう自分の心に言い聞かせて、罪悪感から逃れようとしているのかもしれない。