クリア・スカイ
「失礼します」
二回ほどノックをしてから静かに扉を開ける。部屋の中には、たくさんの生命維持装置を付けて横たわっているほたると、彼女に付き添う母親の姿があった。
「陽咲ちゃん、今日も来てくれてありがとう。昨日は旅館に?」
「はい。昨日若女将から給料を頂いてしまって……なんだかすみません」
「何謝っているの。働いてくれているんだから、当たり前でしょう」
「若女将も、女将と同じことを言っていました」
女将と話しながら、ベッドそばにある椅子に腰かけた。ほたるの部屋は個室なのに狭苦しい印象を受ける。それはきっと、ほたるの命を繋いでいる数々の機械が置かれているせいだろう。
この機械が無ければ彼女は天国へ逝ってしまう。そういう無言の圧力をかけられているような気がする。