クリア・スカイ
「陽咲ちゃんは旅館に出ていない私のことを、まだ女将って呼んでくれるのね。優子さんには本当に迷惑かけてしまって……」
「女将はいつまでも女将ですよ! それにほら、私と駆はずっと女将って呼んでいましたから、今更変えるって言うのも難しいです」
「確かにそうね、もうあだ名みたいなものだものね」
困ったように笑う女将の顔。昔よりも頬がこけて、しわも増えた。一つにまとめた髪のところどころには白髪が生えている。女将がこの数か月で老けたのは誰が見ても明白だった。
女将はきっと、私の何倍も何百倍も、ほたるのことがショックだったんだろう。そう考えると苦しくて心の奥がキュッとしめつけられる。
女将はほたるが自殺未遂をしてから、ずっとほたるの看病を続けている。いま旅館を取り仕切っているのは女将の夫である板長の妹であり、私たちは彼女を若女将と呼んでいる。