クリア・スカイ
 
『私のことは気にしないで、前だけを向いていてほしいよ』

「うん、分かっている。でもね、ほたる。人の心はとっても複雑なんだ。頭では分かっていても、動き出せないこともあるんだよ。心がいう事をきかないの」


 想像のほたると話しているだけなのに、気が付いたら涙をこぼしていた。自分の想像で泣くなんてイカれている。そう分かっていても涙はとまらなくて、やっぱり心はいう事を聞かない。


「……陽咲ちゃん、大丈夫?」

「あっ! 女将! すいません、私……」


 気が付いた時には女将は私の後ろに立っていて、両手に持っているお皿の上には色とりどりのフルーツが並べられていた。リンゴやブドウ、オレンジなどが食べやすい大きさに切られている。

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