クリア・スカイ
「この辺に座りましょうか。空野さん、良かったらこれを敷いて座って下さい」
柳さんはズボンのポケットから几帳面に畳まれたハンカチを取り出し、私に見せた。
「そんな、使えないですよ」
「使ってください。さっきも、空野さんのワンピースが気がかりで海に集中できなかったですし。ね?」
「えっと……ありがとうございます」
さっきといい今といい、柳さんはちょっと強引なところがあるみたい。無理やり渡された青色のハンカチを広げてみると、端に丁寧な字で〈K.Yanagi〉と書かれていた。
「柳さんは持ち物に名前を書く派なんですね」
「はい。無くしちゃうといけませんから」
「確かにそうですね。……では、お言葉に甘えて使わせて頂きます」
ちょっと恐縮しながらも、私はハンカチを砂の上に敷き、その上に腰を下ろした。