クリア・スカイ

 柳さんの体越しに、さっきまでいた方角に目をやると、砂浜の上でボールを追いかける少年達の姿が見えた。
 
 その中には駆もいた。小さくてどんな表情をしているのか分からないけど、笑っているといいな。かたくなにサッカーを拒んできた駆が、今こうして再びサッカーボールに触れている。

 傍からみたらちょっとした出来事でも、私にとってはとてつもなく大きな奇跡だった。


「ありがとうございます。駆の背中を押してくれて」

「大したことはしていないですよ。ただ、彼がサッカーを好きなことは神社での会話で知っていましたから。それだけです」


 私達は、オレンジ色にきらきら光る海を眺めながら会話を続けた。
 美しい景色、波打つ音、少しずつ冷たくなっていく風が心を柔らかくしていく。



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