天使のうた
クラス表を見て、自分の名前が書かれていたクラスへ向かう。
亜由美とは離れてしまった。
「一から友達作らなきゃ」
期待と不安を胸に自分の席に着く。
チャイムと同時に教室に着いたのに、隣の席はまだ空いている。
私の隣は、初日から遅刻するような人なんだろうか。
ガラッと教室のドアが開き、担任と思われる人が入ってくる。
「おはよう。今日からこのクラスの担任をする斉藤だ。よろしく」
若めの、体育会系っぽい先生だった。
「自己紹介の前に、少しみんなに伝えとかないといけないことがある。教室に今、一つ空いてる席があると思うんだが」
私の隣の席のことかな。
「そこに座るはずの生徒が、事故で二ヶ月間入院してるんだ。怪我の方はもうだいぶ治ったらしいんだが…頭を強く打って、記憶障害が表れてるようでな」
記憶障害…?
「その上新しい環境で初めは彼も戸惑うと思うが、仲良くしてやって欲しい」
みんな静かに聞いていた。
次の先生の言葉で、私の頭に電撃が走った。
「彼の名前は、橋本 恭介」