恋愛結婚させてください!
服を着て、バスルームを出ると、
トウマ君が
「交代。コーヒー淹れて。できるでしょ。」とバスルームに消えた。
父がはコーヒーが好きだったので、家ではペーパードリップだ。
1人暮らしになった私はインスタントを使ったけど、
トウマ君もペーパードリップか。
何もないキッチンにステンレスのケトルとコーヒーの袋なんかが置かれていた。
ボンヤリお湯を沸かしながら、冷蔵庫を覗くと、
卵とチーズと生ハムがあった。
朝ご飯作っておくか。
迷惑かけたし。

卵を溶いて、チーズと牛乳を加え、スクランブルエッグを作っていると、
「いい匂いじゃん。」とトウマ君が戻って私の顔をみる。
「勝手に作ってしまいました。」と言うと、
冷凍庫から冷凍パンを出して、トースターに入れ、
「好きに使え。許婚だろ。」とお皿を出した。
私は呆れて言い返せない。
お皿に卵を乗せ、生ハムを添えた。
一緒に食べると美味しいはずだ。

「いつから許婚って事になってるんですか?」
とカウンタータイプのキッチンとリビングの間にお皿を並べて、
立ったまま食事を始める。
私はコーヒーだけだ。まだ、食欲はない。

トウマ君は
「料理が出来るのはプラス。だな。」と言いながら私の顔を見て、
「俺が引っ越す前、医師になりたいって、コムギのオヤジに言ったら、
小児科医になってここを継いでくれてもいい。って笑って
…たぶん冗談半分だったと思うけど、
俺にとってコムギのオヤジは、いつもだらしない俺のオヤジなんかより
ずーっと俺のヒーローだったから、
本当ですか?って夢中で聞き返した。
そしたら、
タイガは医者になるつもりもなさそうだったし、って驚いた顔をしてから、
真面目な顔をして、本当に小児科医になったら、ここを譲るって言ってくれた。
まあ、そうなったら、
ついでにムギももらってくれるかって言ったから、
俺は必ず、そうしますって、コムギと結婚して、「あおい小児科」を継ぎます。
って、そう約束した。」

私は「ついで」で許婚になったのか?!
と自分の親に腹がたつ。


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