恋愛結婚させてください!
あのノシ。
とんでもない母だ。
あんなノシを持って挨拶に行ったら「あおい小児科」を継ぐ男だと、
一緒に挨拶に行ったオンナが蒼井ならその女と結婚するのだと、
誰もがそう思うだろう。

下の階、管理人室に挨拶を済ませ、
エレベーターでトウマ君の部屋に戻る。

「トウマ君。本当にクリニックを継いでいいの?」と聞くと、
「もちろん。そのつもりでここに来てる。」と真面目な顔。
「トウマ君。本当に私と結婚するつもりなの?
18年も経てば変わるよ。
私の事は何も知らないでしょ。
なんで昨日振られたのか教えようか?
私は束縛するオンナなの。
相手が嫌になるくらい面倒なオンナなの。」
とため息をつきながら言うと、
「例えば?」と私の顔を覗くので、
「毎日電話しろとか、どこにいるのとか。
出かけるなら誰と出かけるのとか、戻ったら連絡しろとか、
スマホの中身を見せろとか、愛してるって毎日言えとか!?
驚いたでしょ?!」と段々声が大きくなってしまう。

「俺はさ、他のことで驚いてる。
酔っ払ったコムギが面白かったり、
コムギの胸が思いがけずデカかったり、
料理ができそうだったり。」
と真面目な顔をして、ふざけたことを言う。

「…真面目に聞いてるんだけど。」とため息をつくと、

「うん。驚いてるよ。
オトナになったんだね。
コムギの事、すごく好きになりそうだ。」と私を見つめた。


う。
嘘お…?

口がきけない私を外廊下に置きざりにして、
トウマ君は部屋の玄関のドアを開け、
「帰りました。」と笑った声を出した。

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