恋愛結婚させてください!
七里ヶ浜の駅から5分の賃貸アパートに着く。
「ここ?」と一緒に車を降りたトウマ君は私の顔を見る。
私が頷くと、うーん。と言って、
「オートロック?ワンルーム?」と聞くので、うなずくと、ため息の後、
「まあ、オートロックなら一応安全か。
でも、俺、狭いの苦手。早く俺の部屋に引っ越しして。」
と私の手にマンションの鍵と思われるモノを乗せた。
「いらないし、引越しもしません。」と言って鍵を返そうとすると、
手を握られて、引っ張られ、
いつの間にかすっぽりトウマ君の腕の中に入ってしまう。
こ、コラ。
「もらうって言うまで離さないけど。」と薄く笑う。

アパートの前の道は江ノ電が停まるとけっこう人が通る。
住宅街の始まりの場所だし。
抱きしめられている後ろを人が通っている。急に足早になるのがわかる。
見られてる。近所の人にー。

「も、もらいますっ。」と腕を抜けでようともがく。
「スマホ出して。連絡先のこうかんもしたい。」
と更に固く抱きしめ、耳元で囁く。
「出すっ!出します。だから離してっ。」
と言うとフフンと笑って、ゆっくり離れて、私に手を出す。

やれやれ。
すっかり、トウマ君のペースだ。

電話番号やラインなどのアドレスをシブシブ交換すると
「毎日電話だろ。」とトウマ君は微笑んだ。
いや、一緒の病棟だから、毎日会うでしょ。
それに、恋人じゃないけど。って言う私の呟きは無視されたみたいだ。

トウマ君は車に乗り込んで、
「コムギ、さっきのレストランの駐車場に病棟で見かけたヤツがいた。
きっと、キスしてたって言われるな。楽しみだ。」と言ってエンジンをかける。
「え?」とポカンとすると、
「明日から、病院では恋人って事で。」と車はいなくなった。

「えー!?」と思わず大声が出る。
ワザとキスしたんだ。
馬鹿トウマ!

明日っからどんな顔をして仕事すればいいんだ?
リーダーなのにぃー!?




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