デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
――全く、大人しく自分達の国に引っ込んでおけばよかったものを。蛆虫が人間の真似事をするから、己の首を締めることになるのだ。

鼻を鳴らし、そう心の中で言う。

あの日。

王都近郊の街の副武官長が謁見に来た日に、王都への『魔』の襲撃があることは悟ったのだったが。

(まあ、神児の『分化』の時期に被らずに良かった)

懸念事項はそれのみだったので、今日と言う日にはあまり心配はなかった。

王都の中からは自由に出られ、外からは一日に四回、王都の大門からしか入れない結界。
神児の負担を軽くするためというのももちろんあるが、主たる目的は2つだった。

まずは、『魔』達に、こちらが王都襲撃に感づいているということを知らしめるため。
そしてもう1つは、王都に入る『魔』の質を均一化・限定するため。

結界を張ったことで、これまでのように空から大群で大挙して街を襲うという狩りの仕方は出来ない。空からも、王都へは入れないからだ。

ならば必然的に、王都の大門から少人数ずつこっそりと、王都へ侵入してくるだろう。
現に、桜が王都へ出かけたときに『魔』と会っている。

が。

王都襲撃にこちらが気づいてから今日まで、おおよそ一月。先日調べさせたように、その間の王都の死者数の増え方は今までと変わらない。
< 1,019 / 1,338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop