デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
しばらくしてようやく一旦満足し、顔を離して桜ににっこり笑う。

もう緊張でヘロヘロになった彼女は、目を回しながらソファの背もたれに身を預けた。

「傷はどうだ?」

王の手がそっと、その包帯の巻かれた左腕に触れる。

「え…あぁ、もう全然痛みませんよ。ほとんどふさがっちゃって、きれいに治ってきてます。……ホント信じらんない」

「そうか……よかった。神官の神力をあらん限り使って治療させたからな」

「すごいですね、朝と今でも全然違います。明日の朝にはもう治っちゃうんじゃないかなあ」

思わずそう言って、あわててハッと口をつぐんだ。

(ば、ば、バカ!今王様が言ったこと忘れてた!)

「……ほう?」

微笑みを深くして、またじっと見つめられる。

「……と思いますけどどうなんでしょうねえ、さすがにまだかなあ、あはは……」

内心焦りながら、引きつった笑いを浮かべてみる。

「桜」

黒髪を一房もてあそびながら、口を開いた。

「明日は快晴のようだ」

いきなりの脈絡のなさに少し目を丸くして「はい…」と答えると、

「先日そなたが私に言ってくれたことをしようではないか」

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