デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
桜が深宮を出た時には、もう昼前になっていた。

(また……寝ちゃってたなぁ)

頭をかきながら、赤い顔で渡り廊下を歩く。

よく晴れていているが、何だか風が湿っているようだ。

(午後から雨が降るのかな?)

空を見上げて、少しまばたきした。

結構遅く起きたのに、何だかまだ眠いような感じがして、目をこする。

(眠い、っていうか……)

気だるいのだ。体が。

原因に気づいて、途端に真っ赤になった。

(う…うわわわわ)

昨日の記憶がよみがえる。

(と、とんでもないことを……致してしまいました)

恥ずかしさで目眩がしそうで、一人でぎこちなく歩く。

(き、今日どんな顔で王様に会えば……)

ヨタヨタと部屋の戸を開け、ソファに倒れ込んだ。

自分を乞うように見つめた顔や、熱い肌や、翻弄させられた指先を思い出してしまい、

「わーわー!何何もう!昼からっ!えっち!バカッ!!」

真っ赤な顔で自分を罵りながら、死にかけの芋虫のようにのたうち回った。

しばらく暴れたあと、はー……とため息をついて身を起こし、背もたれによりかかる。

「でも……嬉しかったな」

王様も喜んでくれて。だから、嬉しい。

「……また、お泊りすること、あるかな。近いうちにあるといいな」

そうぽつんと独り言もらして、また顔を染めた。
< 1,191 / 1,338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop