デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
『橋から歩かなきゃならんのが、面倒くさいんだよなあ』

堀を渡り、大門に向かう林を通り抜けながらシュリがボヤいた。

桜が上を見上げると、木々の間から白い城壁が夕日の光を浴びて、そびえ立っているのが見えた。

(きっと、ここが目的地なんだろうな)

なんとなく、そんな気がする。旅の終着はここなのだ。

(ここで、私どうなるんだろう……)

ポッカリと開いた城門が近づくにつれて、不安が増していく。

城門ではかがり火が盛大に焚かれ、門番の数も、さっきよりは多い。また、その身なりも橋の兵士の物よりは上質そうだった。

『アスナイとシュリが例の者を連れて戻ったと、王にお伝え願いたい』

アスナイが門番の一人に言う。

すると、

『それには及びません。前もってお二人が戻られたら通すようにとのお達しを受けてございます』

ピシリと一礼して、あっさり三人を通した。

城門は高く、奥行きもあった。ひんやりとした石の冷気が漂っていて、薄暗い。足音と蹄の音が反響して、何だか不気味だった。
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