デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
「すごくきれいな河なのに…汚れてるのかな」
顔をしかめて、自分で水を絞れるだけ絞ってしまうと、桜は土手を登り始めた。
「土手の上か、向こう側には道があるよね」
体も重く、運動も苦手な桜は、早くもハアハアと息を切らせている。
「…おなか、すいちゃった…喉もかわいたし…」
家に帰ったら、おいしいもの買って食べよう。こんな目に遭ったんだから、ちょっと奮発しちゃえ。
そんなことを考えながら、桜は自分自身を励まして長くて高い土手の傾斜を、一歩一歩登っていく。
そしてついに、彼女は土手を登りきったのだが―
「……え?」
眼下に広がるものを見たとき、喜びのそれではなく、間の抜けたような声が桜の唇からこぼれおちた。