デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
桜はもちろん、そんな礼など知らない。

(え……なにこれ、私もするんだよね?)

戸惑っていると、少年がスイ、と横に来た。

“女性は両膝をつき、手は交叉してそれぞれの胸に当てるのです”

桜にしか聞き取れないくらいの声で教えた。

あわてて頷き、その通りに礼をする。

少年の離れる気配がし、しばらくして

「帳を開けよ」

白い幕の向こうから、若い男性の声がした。

頭を下げているので見えはしなかったが、恐らく少年が開けたのだろう。
サシャ、という音がして、帳が上がったのが分かった。

少しの間があり、声が上から降ってくる。

「ようこそ、異世界の客人(まろうど)よ。そなたを歓迎しよう。まずは、顔を上げて欲しい」

凛とした、よく通る声だ。

桜はそろそろと顔を上げ、王を見た。
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