デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
ちょくちょく感じていたが、自分の髪と目の色は、そんなに珍しいのだろうか。
桜にしてみたら、生まれつき色々なカラーがついているこっちの人間の方がよっぽど珍しい。

「そなた、名は?」

長い脚を折って、王が立膝をつく桜に視線を合わせた。

輝くような、美しい微笑み。
ふわり、といい匂いが藍色の髪から香る。

(はぁあ……眩しい……)

「…桜です」

目をしぱしぱさせて答えた。
テレビでも、こんなに綺麗な人は見たことがない。しかも男の人だというのだから、一体どうなってるんだろう。

「サクラ。…名前も珍しいな」

…そんなことないと思うけど。

それより、緊張するからもう少し離れてはくれないだろうか。

「桜。そなたにはしばらく我が宮に滞在してもらおう。私の客人として。異世界の話など、ゆっくり聞きたい」

「え……」

それって、どのくらい?

シュリとアスナイを見るが、こちらに目を向けてはいるものの、言葉は発しない。王が対話をしているときの勝手な発言は、緊急時でもない限りできないのだ。

「あの……私、この世界の事をまだ全然知らなくて。言葉だって、今やっと通じるようになったんですけど……」

「ああ、神処に行ったのだろう?その後【衣の司】で、統括長とやりあったそうだな」

くすくすと、おかしそうに笑う。

「自分は異世界の人間だ、だから誰の指図も受けぬとな。なかなか面白い娘だ」

いつの間に、ついさっきあった出来事を知っているのだろう。しかも、それをこの国で一番偉い人から言われると、何とも居心地が悪い。
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