デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
ひとしきり笑ってから、スイ、と王は立ち上がった。

「では、桜。客用の部屋を用意させた。話は明日からだな。楽しみにしている………これは本当だぞ」

そう言って、そっと手を差し伸べた。

戸惑いながらその手を取る。大きくて、ひんやりとしていた。
桜を立たせた後、金髪の少年を振り返り、

「カナン。桜を客間まで案内せよ。ゆっくりと疲れが癒せるように」

「はい」

カナンと呼ばれた少年が、一つ頭を下げ、桜のもとへやってくる。

「ご案内します」

「え…」

(もう、お別れ……?)

思わずシュリとアスナイを振り返った。

二人はこちらをじっと見ているが、言葉は発しない。

「あの」
「桜様。参りましょう」

有無を言わさぬ口調で、促される。

「……っ」

(お仕事、だもんね……)

ここで話をさせてとごねても、自分は良くてもこの二人にどんな迷惑がかかるか分からない。

「…はい」

あきらめて目を伏せ、カナンに向き直る。

(お世話になりました………)

心の中で二人に頭を下げ、謁見の間を後にした。

< 257 / 1,338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop