デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
パタン、と後ろの大きな戸が閉められる。

「さてと」

くるりと体の向きを変え、段上の椅子に腰かける王。

「汝らも、言葉も解らぬ娘を連れての旅、ご苦労だったな。何ぞ、望むものはないか」

足を組んで、二人に尋ねた。

「では、恐れながら一つございます。現在の所属を、王宮付に転属願えませんでしょうか」

アスナイが静かに言う。

「俺も……いえ、私も同じです」

シュリも、きっぱりと請願した。

「ほう?」

王は薄い微笑みを崩さず、片眉を上げた。

「二人揃って同じ褒賞を望むとは、仲が良くて結構なことだ――だが、アスナイ」

「…はい」

「そなたは確か、現在の赴任地の後は、ザライエ地方の任を希望していたはず。――シュリ」

「はい」

「そなたの希望も王都ではなく、レナート地方だったな。どちらも【地下の門】がある、『魔』の出没頻度が高い場所だ」

全ての武官の情報が、頭の中に入っているのか。

改めて、王の英明さに舌を巻く二人。

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