デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
ふと、空を見た桜は息をのんだ。
青い空に浮かぶ、大きな二つの白い天体。右側にあるのがよりここから遠いのだろうか、左のそれよりふた回りほど小さい。
「こんなの…知らない…」
知らない容貌の人々。明らかに、月なんかではない星。
信じたくない。そんなバカな。ここは21世紀の日本のはず。
必死にあたりを見回して、その証を探すけれど、美しい初夏の草花の風景が広がるだけで。
そう。初夏の風景。
「違う………ここは、違う……」
十一月だった。桜の世界は、初冬だったはずだ。
あの住宅地の川に落ちる寸前、3人の男子に暴力をふるわれながら、見たじゃない…
枯れ草が、川辺で揺れているのを。