デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
蕾はほころぶ
「では、また明日、我が君からお呼びがかかったら迎えに……来る」
桜の部屋の戸口で、カナンが言った。
何となくまだ言葉遣いに慣れずに、ぎこちなくなる。
「うん。……ふふ、まだなんだか慣れないね」
「……」
「でも、ありがとう、カナン。私ずっと友達もいなかったから、嬉しいよ」
「そうだったのか?」
意外に思い、カナンはまばたきして桜を見た。
「うん…家でもいつも一人だったしね。でも私のそれは、カナンと違って逃げてた自分のせいだから」
すると、カナンはほんの少しだけ、目を優しく細めた。
「……自分のせいなら、自分次第でこれから変われるさ。良かったな」
桜は目を丸くする。そんな風に、思ったことはなかった。
「そっか。そうだね」
嬉しくなって、パッと笑う。するとなぜか、カナンはそっと目をそらした。
「では、私は公宮に戻る…から」
「あ、うん。ありがとう。また明日ね、カナン」
軽く手を振る彼女に頷いて、戸口を閉めた。
宮を出て、ふう、と息を吐く。上を向いて薄く目を閉じ、
肺いっぱいに空気を取り込んだ。
ゆっくりと目を開けて、公宮に歩き出す。
昼過ぎに桜を迎えに来たときよりも、ずっと体が軽い。
“また明日ね、カナン”
すっと心に入ってくる、優しい声。
昨日まで胸に渦巻いていた黒い感情はもうかけらもなくて、心がフワフワするような、くすぐったくてどこか甘い感覚に満たされていた。
桜の部屋の戸口で、カナンが言った。
何となくまだ言葉遣いに慣れずに、ぎこちなくなる。
「うん。……ふふ、まだなんだか慣れないね」
「……」
「でも、ありがとう、カナン。私ずっと友達もいなかったから、嬉しいよ」
「そうだったのか?」
意外に思い、カナンはまばたきして桜を見た。
「うん…家でもいつも一人だったしね。でも私のそれは、カナンと違って逃げてた自分のせいだから」
すると、カナンはほんの少しだけ、目を優しく細めた。
「……自分のせいなら、自分次第でこれから変われるさ。良かったな」
桜は目を丸くする。そんな風に、思ったことはなかった。
「そっか。そうだね」
嬉しくなって、パッと笑う。するとなぜか、カナンはそっと目をそらした。
「では、私は公宮に戻る…から」
「あ、うん。ありがとう。また明日ね、カナン」
軽く手を振る彼女に頷いて、戸口を閉めた。
宮を出て、ふう、と息を吐く。上を向いて薄く目を閉じ、
肺いっぱいに空気を取り込んだ。
ゆっくりと目を開けて、公宮に歩き出す。
昼過ぎに桜を迎えに来たときよりも、ずっと体が軽い。
“また明日ね、カナン”
すっと心に入ってくる、優しい声。
昨日まで胸に渦巻いていた黒い感情はもうかけらもなくて、心がフワフワするような、くすぐったくてどこか甘い感覚に満たされていた。