デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
その言葉で、シュリはようやくのそのそと身を起こした。
頭を二、三度強く振って、眠気と草を落とす。
「…はあ」
大きなため息をこれみよがしにつくが、相棒はさっさと自分の愛馬をひいてきている。
「早くお前もリーを連れてこい。野獣に食われるぞ」
自分の馬の赤紫のたてがみを撫でてやりながら、アスナイはうながした。
肩までのグレーの髪に、男性にしては白い肌。切れ長の紺色の目に、すっと通った鼻筋。どちらかというと中性的な顔立ちの相棒を、シュリはそっと睨んだ。
―まったく、見かけ倒しのサドだぜ、こいつは。
有能な同僚で仕事は心強いが、この性格はタチが悪い。
しぶしぶ立ち上がり、自分の馬を迎えに行く。
自分よりも少し背の高い彼をを横目で見やりながら、アスナイはマントをはおった。
赤い短髪に、日焼けしたしなやかな体、精悍(せいかん)で端正な顔立ち。
見た目も性格も全く違う二人だったが、その有能さと容姿から、二人の赴任地での女性の人気はほぼ同等に高かった。