デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
明日、やっと王都に行ける。

明け方どころか、今すぐ向かいたい気分だった。

(桜、元気にやってんのかな)

何回思い浮かべたか分からない笑顔を、また思い出した。

すう、と朝の空気を吸い込んで、報告書を大切に保管するため自室に向かう。

夏空を見上げて、陽のような微笑みをその端整な顔に浮かべた。

「おぅシュリ、ニヤニヤしてどうしたんだよ」

同僚が馬を連れて、厩舎から出てきた。

「ちっとな」

「お前、明日王都に行くんだろ?大変だなおい。新米とは言え、こんな伝達係を負わされて」

「別に。楽しみだから構わねぇよ」

意外な答えに、同僚は灰色の目を丸くした。

「へえ?……王都の巨大色街目当て…じゃないよな、お前最近、コッチの方は全然付き合わねーし」

薄く笑いながら黙るシュリに、あ、と鋭い同僚は指摘した。

「ははあ………女だろ。単に金で買う女じゃなくて、将来を考える女だな」

「!」

何で分かるんだ、こいつは。

顔を真っ赤にして、驚愕して彼を見た。

「お前じゃねーんだ、だいたいわかるよ。しかしそうか…キトニからの旅でお前変わったが、そーんな相手ができてたか」

ニコニコというか、ニヤニヤというか。
生温かいその笑顔を、赤い顔でじろっと睨みつけた。
< 520 / 1,338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop