デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
はっ、と桜は息を飲んで、顔をそむけた。

「だ…だめ、カナン」

「…なぜだ」

桜の頬を両手で捉えたまま、低く聞いた。

「あ……う……」

だって、さっき。

シュリにあんな事されたのに、すぐにカナンとなんて、出来ない。
何だか、ひどく奔放で、人をたらし込んでいるみたいで、不実な感じがして嫌だ。

だって、本当はこういう事は。

「自分が本当に、す…好きな人としかしちゃ、だめだもん」

流されてするものじゃない。

今更感もあるが、やっぱりこんな短時間の間になんて。

すると、桜の頬を包む手に力が入った。

「…じゃぁ、私には何の問題もない」

言うが早いか、唇が重ねられた。

「んっ……」

一瞬桜の両手が宙をさまよったあと、カナンの二の腕をつかんで押し返そうとする。

手の力はそのままに、少しだけ唇が離された。

「だ、だめ…今は、今日は………」

わずかに振られる赤い顔に、潤んだ黒い瞳が胸の火を煽る。

「……あの赤髪に、どういう風にされたんだ。言ってみろ」

強い眼差しで驚きに見開かれる桜の目を見て、また顔が重なる。

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