デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
わずかに音を立てて、ゆっくりと何度か深く唇を繋げたあと、そっと離れる。

「……ヘタな嘘をつくなと、この間言っただろ」

「〜〜〜っ………」

額まで赤くして、両手で口を押さえてぷるぷる震える桜を、ジロリとネコのような目で睨んだ。

「…私はあの武官のように自由にお前を連れ出せる訳じゃないが……」

小さく笑う。

「お前が何をされても、すぐに取り返してやる」

そう言って、ふにっ、と彼女の頬をつまんだ。

「カッ…カッ…カナン…………昨日は、誰に見られるかわかんないからって、さっさと帰ったのに………こ、こ、こんな」

しどろもどろで抗議する桜に、すました顔をした。

「そんな失敗するわけないだろ。お前じゃないんだから」

「もうっ!」

恥ずかしさのままに、思わず両の拳でドン、と彼の胸を叩いた。

フッと笑って金の髪を揺らした後、ぎゅっと桜を抱きしめた。

「わっ……」

「私は退く気はないからな」

きっぱりと言って。
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