デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
わずかな不安に、むつっと口を結んだ。
「王様……」
「……神児に、心を移すな。魅入られるなよ」
「ハ?」
思わず目が点になる。
なんという幼稚な独占欲。そう思って、王は恥ずかしさに目元を染めた。
だんだんこの娘の前で、桜に見せたくないようなみっともない自分の心が、むき出しになる事が増えてきた。
「神児さんって、男の方なんですか」
「違うが……」
へぁ??と桜は思わず眉を歪めた。
「いや……私、ソッチの趣味はないですから」
呆れる彼女を睨みつける。
「分かったものではない。……行って、神児に会えばそなたも理解しよう」
訳の分からない言葉に、「はあ……」と曖昧な返事をして、桜は部屋を出ていった。
遠くなっていく桜の足音を聞きながら、王は冷たい表情で聞こえないくらいの舌打ちをした。
公宮で抱いた、王として、主君としての慈しみと厳しさを含んだ感情とは全く真逆の、ドロッと黒い、淀んだそれ。
どちらも真実の彼だ。
(鬱陶しい羽虫。今日はカナンで、明日は神児か。愛する花から一匹いなくなったと思ったら、また一匹わいて出る)
…………邪魔だ。
「王様……」
「……神児に、心を移すな。魅入られるなよ」
「ハ?」
思わず目が点になる。
なんという幼稚な独占欲。そう思って、王は恥ずかしさに目元を染めた。
だんだんこの娘の前で、桜に見せたくないようなみっともない自分の心が、むき出しになる事が増えてきた。
「神児さんって、男の方なんですか」
「違うが……」
へぁ??と桜は思わず眉を歪めた。
「いや……私、ソッチの趣味はないですから」
呆れる彼女を睨みつける。
「分かったものではない。……行って、神児に会えばそなたも理解しよう」
訳の分からない言葉に、「はあ……」と曖昧な返事をして、桜は部屋を出ていった。
遠くなっていく桜の足音を聞きながら、王は冷たい表情で聞こえないくらいの舌打ちをした。
公宮で抱いた、王として、主君としての慈しみと厳しさを含んだ感情とは全く真逆の、ドロッと黒い、淀んだそれ。
どちらも真実の彼だ。
(鬱陶しい羽虫。今日はカナンで、明日は神児か。愛する花から一匹いなくなったと思ったら、また一匹わいて出る)
…………邪魔だ。