デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
ぴたっと動きを止める桜。

しばらくして、観念したように、「はい………」と蚊の鳴くような声でうなずいた。

ポツポツと、自分の気持ちと、カナンとのこと、これからシュリとアスナイに断りの言葉を告げなければならないことを話した。

「そうでしたの……」

「よく、ご自分のお心に気づかれましたわ、桜様」

先程までとは打って変わって、ソファの桜の目線に合わせてひざまずきながら、優しく二人は微笑んだ。

「あの…一応このことは……」

「ええ、桜様がご自分ですべて解決なさるまで、決して口外致しませんわ」

うなずく二人に、少しホッとして小さく笑った。

「ありがとうございます。なんだかお二人に話したら、楽になりました」

そんな桜に、ルネが少し気づかわしげに言う。

「桜様。念のため、宮中の他の者には、桜様のお気持ちはお話しにならない方がよろしいかもしれないですわね」

フラウもうなずいた。

「ええ、何が桜様を危うくするか分かりませんから。心の機微というものは、とかくつけこまれやすいものですわ」

「分かりました。……と言っても、こんなこと恥ずかしくて、お二人以外には話せません」

赤い顔のまま頭をかいた。

「そうそう、神児さんに、『友人はできましたか』って、聞かれたんです。そしたらお二人の顔が浮かんで」

「「……!」」

「勝手に『はい』って答えちゃいました。ふふ……女官さんなのに、おかしいですかね」

笑う桜に、二人はほんのり頬を染めて、首を横に振った。
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