デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
同じ時刻。王都の街はいつものように、夜のきらびやかな姿に変貌していた。
行き交う人々が食事を取ったり、遊技場に連れ立っていったり、巨大な色街へと出勤または楽しみに行ったりと、昼とはまた違う活気と熱がみなぎっていた。

「アスナイ」

同僚の声に、かぶっていたフードを取り、彼は振り向いた。

「副武官長が、今日はここまでにしようだと。夜間は、アンブラの街のやつらが交代するはずだ」

「分かった」

同僚と連れ立って歩きながら、アスナイは聞いた。

「どうだ、首尾は」

「さすがにそう簡単じゃない……けどまあ、何とかなるだろ。今日、我が君から副武官長に新たな伝達があった。漏洩を防ぐために教えてはもらえなかったが、当初の予定より多分ぐっとやりやすくなると言ってた」

「そうか……あとは」

「ああ、その時までバレないようにすることだな」

二人の武官はうなずき合い、またフードをかぶった。

「さあてと、仕事はここまでだ。それにかえって堂々と街の人間に溶け込んだほうがバレないぜ。付き合えよ、アスナイ」

片目をつぶって笑う同僚に、小さく苦笑いした。

「女はいらんぞ」

「そう言うなよー。お前がいるのといないのとじゃ、誘える女の数も質も違うんだよ」

ガシ、と肩に腕を乗せられ、アスナイは呆れてため息をついた。 

「俺は撒き餌か」
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