【短編】*甘情メランコリー*
……水樹、寂しいよ。
なんて思ったってなかなか電話できないのは、私の強がり。
彼は彼で新しい生活を楽しんでる。
寂しさを引きずっているのはきっと私だけ。
だったら連絡なんてきっと迷惑だし、なんか悔しいし。
「お前最近太った?」
「うるさい!」
「あれ、本当に太ったんだ?」
「黙れチャラ男」
なんて、何だかんだ楽しかった言い合いをしなくなったのは、いつからだっけ。
まあ会ってもいないんだから、太った?なんて思うわけないけど。
前みたいに、仲良くしたい。
おやすみ、とか、好きだよ、とか。
そんな甘いメッセージよりも、近い距離が欲しい。
『今日の心霊特集見た?』
……よし、これでいこう。
怖がりのくせにそういうの見たがる私は、いつも水樹にしがみつきながらテレビを見て。
水樹はそんな私を見て笑って。
「録画したから今度見ようよ」って、誘ってみよう。
……何か理由がなきゃ、電話する勇気がないから。
そんな自分に落ち込みながらも、通話ボタンをタップ。