【短編】*甘情メランコリー*



……水樹、寂しいよ。


なんて思ったってなかなか電話できないのは、私の強がり。



彼は彼で新しい生活を楽しんでる。

寂しさを引きずっているのはきっと私だけ。




だったら連絡なんてきっと迷惑だし、なんか悔しいし。




「お前最近太った?」
「うるさい!」
「あれ、本当に太ったんだ?」
「黙れチャラ男」






なんて、何だかんだ楽しかった言い合いをしなくなったのは、いつからだっけ。



まあ会ってもいないんだから、太った?なんて思うわけないけど。


前みたいに、仲良くしたい。

おやすみ、とか、好きだよ、とか。


そんな甘いメッセージよりも、近い距離が欲しい。







『今日の心霊特集見た?』

……よし、これでいこう。


怖がりのくせにそういうの見たがる私は、いつも水樹にしがみつきながらテレビを見て。



水樹はそんな私を見て笑って。


「録画したから今度見ようよ」って、誘ってみよう。



……何か理由がなきゃ、電話する勇気がないから。

そんな自分に落ち込みながらも、通話ボタンをタップ。





< 3 / 19 >

この作品をシェア

pagetop