月が欠けて満ちる間に、たった一つの恋をしよう
「じゃ、一年前の続きしていいかな? ──矢上宗司さん。私は変わらずに貴方が好きです。貴方は?」

 自信満々の笑顔の真ん中で、大きな瞳だけがかすかに不安げに揺れている。

 それを見て取った男は、変わらない彼女の本質と、変わった彼女の努力に、心からの笑みを浮かべた。

「おとぎ話のかぐや姫は男を置いて、記憶を無くして、それで月に帰っちまうだろ? ところがどうだ、現代のかぐや姫はすげえな。月に帰っても忘れず、それどころか迎えに来るんだもんな。敵わねえよ」

「矢上さん?」

「俺の答えは──」

 男の唇が、刻むように、ゆっくりと最後の言葉を紡ぐ。

「好き、だ」
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