月が欠けて満ちる間に、たった一つの恋をしよう
食事を続ける少女を眺めながら、男は彼女と再会した日を思い出した。
それはあの夜から三日ほど経ったころのことだった。
綺麗にクリーニングされたジャケットを持って、閉店間際の店に少女が現れた。
店の中で立ち話をするわけにもいかず、事務所に通したのが運のツキだった。
ついでに、腹を鳴らして真っ赤になった彼女にほだされて、賄いを食べさせたのがもっと大きな運のツキだった。
その料理が気に入ったらしく、夜ごと彼女は店に客としてやって来るようになった。
だいたいいつもラストオーダーの時間より三十分ほど前に入店し、閉店時間に帰っていく。
それがもう一か月近く続いている。
街自体、人がいなくなるのが早いため、閉店時間の頃はもう客の数もまばらで、ひとりで食事するかぐやに話しかけられればつい話し込んでしまう。
他の店員たちも似たようなもので、彼女はあっという間に店の人間と打ち解けてしまった。