MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
 なぜ面倒すぎる足かせを、自ら望んで一生付けなくてはいけないのか。
 そう思っていた俺だが……信用でき、かつ多大に世話になった人に真剣に頭を下げられて、その面倒極まりない結婚とやらをするハメになったのだ。

 だから、むしろ相手は誰でもいい。
 元々相手には興味などないのだから。
 逆に惚れられていないほうが、こちらも気が楽というものだ。

 それから程なくして俺たちは結婚し、凛々子との仮面夫婦生活が始まった。
 いざ始めてみると、実は意外と楽でまったく煩わしくない。ノンストレスだ。
 お互いに好きでも嫌いでもなく自然体で、干渉し合わない関係が逆にいいのだろう。

 仕事を終えて家に帰ると、事前に外で食べると連絡しない限り食事が用意されている。
 掃除は完璧で、家中どこもかしこもピカピカだ。
 自室には前日に洗濯物として出したものが、綺麗に畳まれて部屋の隅に置かれている。

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