MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
 絶対に自分は受け取らないという姿勢を見せる日下さんに、結局私は負けてしまう。
 仕方がないから再び白い封筒を自分のバッグに戻した。

 私はこのためにここに来たのに、なにを引き下がっているのかと自分でも思う。
 完全に日下さんの目力と迫力に負けてしまった。私はこんなに気弱だっただろうか。

「どれがうまかった?」

 心の内で自身を叱責していると、日下さんから問いかけられて、うつむいていた視線を上げた。

「……え?」

「だから、デザートバイキング。覚えてる範囲でいいから」

 感想を聞かせてくれたらそれでいい、などというのは口実かと思っていた。
 代金を受け取らない理由をなんでもいいから取り繕いたくて、そう言っただけなのかと。

 だけど日下さんは私に問いかけつつ、再びタブレットを取り出した。
 どうやら私の感想を聞いて本当にメモでもするようだ。

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