MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
 彼から伝わる匂いと体温、力強く囲われる身体……そのどれもが心から安心できるもので、張り詰めていた緊張が徐々にほぐれていく。

 涙は止まらなかった。
 未だに拭えない恐怖と、ホッと安心した気持ちが交錯して混乱する。

「怖かったな」
 
 日下さんが親指の腹でそっと私の目元を拭った。

 だけど私の顔には別の水滴が落ちてくる。
 これは………涙? いや、雨だ。
 小さな雨粒だけれど、どうやら降ってきたみたい。

 よしよし、と日下さんは私の頭を撫でると、着ていたスーツの上着を脱いで私の肩にそれを乗せた。


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