MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
「まだ雨は降ってるけど?」

 窓の外を見ながら彼が言う。
 心配そうな声を払拭するために、私はにっこりと極上の笑みを浮かべた。

「大丈夫です。もう小雨ですから。駅まで走ります」

 彼は綺麗な顔のまま表情を変えず、窓際に置いていた傘を私にそっと差し出した。
 彼がここに来るときに持ってきていた黒い傘だ。

「せっかく温まったのに、また濡れる気?」

「そうなんですけど……」

「これ、持っていけば?」

「でも……」

 この傘を借りてしまったら、彼が帰るときに濡れてしまう。
 それはさすがに申し訳なさすぎる。
 
「大丈夫。俺は雨がやむまでここにいるつもりだから」

 まったりゆっくり……この空間での時間を楽しみたいのかな。
 お言葉に甘えて、彼の傘を借りてしまってもいいのだろうか。

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