MIRACLE・雨の日の陽だまり～既婚者副社長との運命の再会～

　その後、面接を受けたファーストフード店でのバイトが決まった。
　私はバイト帰りにカフェに寄ったりしたのだけれど、いつ来ても彼はそこにはいなかった。

　考えてみれば、いつも彼がそこにいるはずがない。
　常連客のようだったからカフェに行けばまた会えるいう考えは単純で、とてつもなく甘かった。

　もう一度会いたかったな。
　茶髪のパーマヘアで洒落た黒縁めがねをかけた、アンニュイで綺麗な彼に。
　会って、雨の日のお礼も言いたかったし、また話したかった。

　なのに……
　その彼には、二度と会えなかった。

　数ヶ月後のある日、そのレトロなカフェの前を通りかかるとドアに張り紙がしてあった。

『閉店のお知らせ』