MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
 それを見た瞬間、ものすごく悲しくなったけれど。
 仕方のないことだ。お店が閉店してしまうのはどうしようもない。

 程なくして、そのカフェがあった場所に雑貨店ができた。
 若い女性が好みそうなかわいらしい雑貨を販売している。

 私はいつの間にかそこで働きたいと思うようになった。
 販売の仕事なら、私の元気と笑顔を接客で活かすことができる。

『その傘、嫌いなんだ』

 そう言った彼の言葉が、なぜかずっと耳に残っていた。
 雨に好かれている私だからわかる。
 鬱陶しい雨の日だからこそ、気に入った雨具を使いたいものだ。
 きっと男性用の傘だって、オシャレなものはたくさんあるはずだから、彼にぴったりの傘を私が選んであげたい。

 私はバカだろうか。その雑貨店で働きたいだなんて。
 カフェがなくなったその場所に、あの彼が来るはずがないのに。

 だけどやっぱり、もう一度会いたかったのだ。

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