MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
 そう考えたら、ものすごく自分勝手な行動に思えた。
 なにも告げずに突然消えて、子供の心が傷つかないとでも?
 俺を一緒に連れて行こうなんて、どうせ微塵も思わなかったんだろう?

 子供ながらも、なるべく父に負担をかけないようにと心がけていた俺だったが、このころから変わり始めた。
 女の香水の匂いを纏い、酔って帰って来る父を見ていると、いい子でいる気持ちが失せてくる。

 父も母も、自分優先で好き勝手をしているだけだ。
 なぜ俺ばかり気を使って……バカバカしい。やってられるか。

 それから俺はだんだんと夜遊びするようになり、家に帰らない日もあった。
 自暴自棄になり、勉強の成績も一気に落ちた。それでも父は俺になにも言ってこない。
 見放された。放置された。
 結局父も俺のことはどうでもいいのかと思うと、夜遊びすることに罪悪感を抱かなくなった。

 このころから、喜びも悲しみも怒りも……ありとあらゆる感情が、自分の中からどんどん消滅していった。
 
 自分の周りでどんなことが起こってもなにも感じない。
 眉ひとつ微動だにしない……そんな人格が形成されていく。

 なにもかもがどうでもいい自堕落な生活を送りながらも、一応高校には合格したから通った。

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