MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
 そんな高校二年の秋のある日。

 突然、――― 父親が死んだ。

 仕事中に脳梗塞で倒れたそうだ。
 病院に運ばれたが、息を吹き返すことはなくそのまま荼毘に付された。

 父がやっていた経営難の会社は畳むことになったが、残った借金は保険金でなんとかなった。
 命と引き換えに借金がチャラ。
 父のあっけない最期と共に、そんな不条理なことが頭に浮かんだ。
 実の父親が死んだというのに、俺はどこまでも感情が欠落している。


「大変だったね」

 父が亡くなってしばらく経ったころ、うちに訪ねて来たのが日下 一朗さんだった。

「樋口くん……君のお父さんとは大学の同級生でね。仲がよかったんだ。最近は疎遠になってしまっていたけど」

 俺が小さな遺影写真の前に案内すると、日下さんは正座をして座り、線香を上げてそっと手を合わせた。

「亡くなったとは知らなくて、来るのが遅くなってしまった」

 本当に申し訳ないと頭を下げる日下さんに、俺は無機質に首を横に振った。

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