MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
「私、……別れないわよ?」

 今の話の流れで、なぜそういう言葉が出てくるのだ。まったく理解できない。

「別れてくれとは言ってないだろう」

 静かに俺がそう言葉を返すと、凛々子がフンッと鼻で笑った。

「別れられないわよねぇ。私と離婚するって言ったらパパが悲しむってわかってるから」

「……それは……」

「あなたはね、私とは別れられてもパパとは別れられないのよ。私よりもパパのことが大事でしょう?」

 凛々子の表情は冷静だ。だけど内心は幾分激高しているのだろう。
 早口でとうとうと言い募ったのがその証拠だ。喉元が赤くなったのも、酒のせいではないはず。

「気持ち悪いわ」

「……?」

「あなたとパパよ。実の親子以上に蜜月で。気持ち悪い」

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